オウギの里の幼馴染組
- 鴉月語り部
- 3月8日
- 読了時間: 6分

【前書き】
執筆日 2020/12/28
オウギの里の幼馴染組
登場人物は烏王創世記の部族動乱時代
オイリ、カティンカ、オイゲン、秋明菊
オイリとカティンカ(瓔珞草)の義姉妹、そしてオイゲン(ユージン)皇子のお話。
親世代の幼馴染の三角関係ラブコメ?のギャグです、方言あり。
私(あて)が8つの時に母(かか)様が亡くなった
あては体も弱ぁてな、父様や二人の兄も戦死してしもうた
あてはひとりぼっちや思うてずっと泣いてた
かか様の葬儀で、薄い茶髪のオジサマが慰めてくれてたらしいけどよう覚えとらんのや
あてはシュウメイギク様のお家に預けられてな、そこで4つ下の小生意気な義妹に出会ったんや
名は『珞草』、途中で『カティンカ』に名前が変わった。
「……アンタ、背ぇ高い癖によう泣きよんな」
と生意気そうな眼の小さい女やった
「ぐすっ、当たり前やろ……戦でみんなおらんようなってもうた
かか様に会いたいんや
あては長く生きられへんし早う死にたい……」
「……死ぬなんて簡単に言いなや!!
アンタが死んだら、シュウメイ様が悲しむけん
ほら、これ……和菓子や」
「そんなんいらん……ちょっ!!お前やめんかいどつくぞ……!」
無理矢理口に入れよるでこのクソガキャ
泣きながら食うたら、鼻水の味でしょっぱいけど美味かった
「……なかなか美味いやんけ」
「シュウメイ様からの余り物やさかい」
「余り物なんかい」
シュウメイギク様が出てきて、あての口と鼻水を拭ってくれた
ハンケチに唾付けて拭くのやめて欲しいわぁ……
「オイリ、すまんなぁ……珞ちゃんは不器用やけんね
御前らは今日から義姉妹になる、仲良うしいや」
「……あてがこのガキと?冗談やめてぇや」
「そないに言いなさんな
珞ちゃんも戦争孤児で、たらい回しにされた子なんよ」
なんだかんだこの小さい義妹といっつも一緒やった
ある時、そこそこ顔の整ったお堅そうな男の子が邸にやって来てな
一目惚れやった
「……あの子、誰やろうか
ちょっとカッコええやないのぉ」
珞は頬を染めるあての裾引っ張って
「あいつはやめた方がええ
あたしら武家とは身分が違い過ぎる」
オウギ族は皇族、公家、武家の順に身分があってな
「公家か?」
「その一個上、皇族や」
「そぉかぁ……賢そうで育ち良さそうやもんなぁ……って
なんや、あの子早速いじめられとんで
ほんまに皇族なん?」
緑髪の男の子はすごいいじめられとった
避けられてるのは勿論、なんか一人だけテンション高いし軍隊ごっこ?みたいなのしとんねん
ノリがなんか……浮いとんねん
「しーっ!!!これはナイショ、みんな知らんからいじめとんねん」
珞があての口抑えて
「……なあ、洛。 なんかチラッチラこっち見よんで
弁当持ってこっち一歩ずつ近寄って来んで
どうす」
「こんにちは!お嬢さん達
今日からこの屋敷に就任しますユージン軍曹と申します!以後お見知りおきを…!」
「は、はあ……よろしゅうお願いしますえ~
あてはウエペケレのオイリやさかい
こっちの小さいのは洛草言います……」
なんや距離詰めてきよんで
「……なんやの」
「よろしくお願いしますオイリ一等兵!!
そっちの珞草兵士長も!」
なんであての方が格下やねん
「……野蛮そうだからであります」
なんで心中察してくれんねんエスパーか
ユージンの心中は
(……可愛い子だなぁ……オイリさん
こっちの無愛想な子のお付きかな?)
であった
「……ちょっと、なんであんたが真ん中なん?
オイリはあたしの義姉やさかい
お近づきになりたかったらあたしを通してくれるか」
珞がずっと不機嫌で、あての裾を掴んで離さん
元々この子笑わんけどな
「可愛くないであります!」
「ゆ、ユージンはん? その口調は目立つからやめてもらえると嬉しいなぁ」
聞いたアカンような気もしたけど、口調の理由を恐る恐る尋ねた
「本官は誇り高きザ……でなく、宇宙からやって来た軍人であります!
ケロロ軍曹にはまったであります!
ユージンとい名前なのに友人が一人もおりません(泣)
だから、貴女みたいに可愛らしいお嬢さんに仲良くしていただけると嬉しいであります……」
なんやこいつ……痛い電波ミリタリーオタクか思たらアニオタも拗らせとるやん
はよいねや……(訳 去ってくれ)
「『ユージン』って高貴なんバレバレやで、御前は『ゲロロ』で十分や」
珞、ほとんど悪口やないかい
「この子どもは可愛くないであります!母の弟子の分際で生意気であります!」
「母ってシュウメイ様の……?ってことは、もしかして……
ザドウの皇太子!!?」
「「しーっつ!!!」」
あてが大声上げるから、急いで黙らされたわ
(なんでザドウの皇太子がこんな田舎におるんよ!)
(本官は疎開中であります!今ザドウは北の国ローシアンと戦争中であります!)
シュウメイ様はオウギ族の公家のお嬢さんやけど、夫は烏の最大の帝國ザドウの皇帝だって聞いたわ
普段は隠してるけどな
「まあ、ええわ……オウギの里におる間は仲良うしよなぁ
ユージン……殿下」
「本官の身分がバレないように、呼び捨てでお願い申し上げます
よ、よろしくなオイリ一等兵」
(やっぱりこの子可愛い……本官は年上の優しいお姉さんがタイプであります!
こっちの生意気な子どもは要りませんが)
「……仲良うしてな、ユージン」
「お前には敬語を強制するであります」
珞が義務的に言うと、ユージン嫌そうに言うたわ
シュウメイギク様の御屋敷で賑やかな幼馴染三人の暮らしが始まった
ユージン、本名は『オイゲン・キサナドゥ』
読み方変えただけやしほんまに名前でバレバレやで……
最大帝國のザドウの国……恐らく最後に統一するのはザドウ族か、オウギ族であろうと言われている。
先進国家であるザドウ族と懐古主義の古き良きオウギ族、この二国は同盟関係でもあった。
オイゲンはほとんどザドウの国に住んでたけど、幼少期は母方のオウギの里で暮らした。
青年期は流石にザドウの国におったけど、時折武術の訓練で滞在しに来てた。
……あての一つ年下の初恋、ずっと好きやった
あいつもあてが初恋やったクセにな、あてのアタックが強過ぎて引いたみたいでな……
途中でカティ(珞草)に乗り換えよったでぇ
―――― 時は流れオイリ20歳、オイゲン19歳、カティンカ16歳
「オイゲン様♡ あてとカティどっちが好きなん?
今日こそ決めて欲しいどすえ……?」
腕を組み、胸元をはだけさせて誘惑するけど
あて、乙女どすえ~
「……そそれは……どっちも選べない!
どっちも好きだ!!!
でもカティ~♡今日こそ私の夜這いを受け入れてくれ!」
おいおいこいつ……カティに毎回毎回迫って背負い投げされて喜んでるわ
ドMなんちゃう?
亡きシュウメイ様もな
「珞ちゃん、オイゲンが間違ったことしたらオウギの里内では好きに投げ飛ばし
あたしが許可するわ」
って言ってはったんよ。
【あとがき】
秋に創作した幼馴染三人組の絆やお話は構想がすぐできたのでずっと書きたいと思ってた。
サイトや本編のキャラ紹介読んだ人にはこの三人の結末が分かってるけど、最後までそれぞれ自分の信念を貫いた三人組として書きたいな。
中編になるかも…ちょっと続くかもしれません。
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