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序章 モラクスの悲劇 レイウVSウェンカム

  • 執筆者の写真: 鴉月語り部
    鴉月語り部
  • 3月8日
  • 読了時間: 7分



執筆日2023年12月20日


モラクスの悲劇始まり、陰鬱描写あり。

親世代しかでてきませんがウヴァル26歳、コルウゥ10歳、ゲオルギオス11歳、ユィム7歳の時です。



 ウェンカム族の王都カナン、砂漠に存在するが魔術都市で結界に守られた土地であった。


平穏な王都は今、大量の死者とキョンシーた少数の騎馬兵がウェンカム兵を殺戮した。


地獄のような光景が広がる中、人々は奇跡を起こす天公将軍モラクスに縋る。


「天公様、モラクス様! なんとかしてください!」


「貴方は奇跡を起こせるのでしょう…モラクス様!」


…儂には、儂にはできん。

あやつがおらねば…儂の、半身がおらねば。


モラクスの策は次々と敗れ、レイウ軍がもう城下まで迫っていた。

魔術師の多いウェンカムの兵は戦に慣れておらず、死者を操ってそれを戦わせていたのだ。

やはり生身の遊牧民族には圧倒的に劣る。


――――「口程にもナイネ! ウェンカムの魔術師は楽しみにしていたのだけれど…ネ

ワタシのキョンシー、おぞましいでしょう?」


末弟ロンウェー、狡猾で胡散臭い男である。

兄達からは信用されておらず、幼き頃より片翼が原因で蔑まれていた。



「遊ぶなロンウェー、末弟のお前がこんな前線で何をしている。」


次兄アグアレス、ワニを従える彼は憤怒を司り強大な地震を起こす能力を持つ優秀な兄。


「そうだそうだ、お前みたいなお子様が来る場所では無い。

片翼のお前は足手纏いだ、退けロンウェー。

お前は信用できない。」


五男ビュレト。


「…口を慎むのはお前だ、ワタシが首都・烏蘭(うらん)で即位すればお前達なんてワタシの臣下に過ぎない。

力に驕るだけの戦士はよくないと思いマスヨ? ワタシやストラス兄者みたいに頭脳はとてもとても大事ネ。


ま、幼いコルウゥとワタシ、どちらかが相応しいのかまだわからんガネ。

この戦はコルウゥの厄払いと前哨戦よ。」


怪しく笑うロンウェーが死体を愛で、物色する。


「あったあった…魔法石ネ。 ウェンカムの技術とても気になる。

ワタシの部隊に取り入れたいヨ。」


魔界と近い土地なだけあって技術が凄まじい進化を遂げている…やはり後進国レイウではいけない。

他の部族を取り入れて最強の軍を作る、これ大事ネ。



――――青冷めた馬、ロバと呼ばれたかつての青年は今や青獅子と呼ばれる程強くなった。

ガミジン・レイウ、現レイウの皇帝でお飾りの暗愚として即位した。

兄妹達が成長するまでの間の中継ぎとして即位させられた。


「…ロンウェー、何をしている。

そちらは大丈夫か?」


「あっ、お兄ちゃーん♪ こっちは終わったヨ。

どうする? ワタシの部隊、もっと進ませる?

あの無能な兄達を景気付けにちょっかいかけて良い?」


ひらひらと手を振る男は少年のように無邪気に笑う、唯一彼を蔑まなかった優しき長兄に向けて。

依存しているのだろう。


「やめろ、お前が言うと冗談に聞こえん。 これ以上溝を作るな、儂も庇えんぞ。」


「ハーイ…お兄ちゃんこそ、気をつけなさいネ

ワタシの気持ち、気付いて?」


ロンウェーが暗器を民家に投げると潜んでいたユカラの忍が姿を表す。


「ガミジン、ロンウェー覚悟!!!」


笑みを浮かべたロンウェーは兄の後ろに下がる。


「…馬を降りるまでも無い」


ガミジンが悪魔術を使うと刺客達は青白い馬の悪魔達に喰いつくされた。


「お見事!流石ワタシのお兄ちゃん!

ワタシだけはお兄ちゃんの味方ヨ…だからネ、ワタシが即位してコルウゥを遠ざけて守りたいデス…

あとこの戦、頑張るからヴァローナください。

ワタシの養女にしてアモンと縁談よ、めでたしめでたしネ。」


2つになるヴァローナはガミジンの長女で異国ローシアン遠征の際に生まれた。

ザドウ族の皇帝イゴールが大層可愛がっていたという。


「嘘をつくな、お前の腹の内は読めている。

大方、コルウゥの才能に少し警戒してろおるのだろう。

お前にそんな慈悲の心があると思えん。」


母親同士が姉妹であるこの長兄と九男は仲が良かった。

ラウム姉妹の子で盗みを得意とする姉妹はシャズ皇帝を襲撃し、二人まとめてその日に妻となった。

姉がガミジンを生み、後に妹のロネウェがロンウェーを生んだ。



10になるコルウゥはガミジンの長子で父に似ぬ整った顔立ちと知略の才能を見せた。

ガミジンにとっては愛すべき子ら…子を思うあまり後に凄惨な悲劇を起こした。



レイウ王家は亡き父にシャズ・レイウ。彼には複数の妻子との間に悪魔の子らがいた。


長女  ビメ(ブネ)  

長兄ガミジン   母はラウム姉

次女  ウィネ


 三つ子の

二男アグアレス  

三男ウァサゴ   

四男ザエボス


五男ビュレト


 赤い双子

六男ベアル

三女ベリス


 青い双子

四女 ソラス

七男 ストラス


 そして下には   

八男オティウス(ボティス)  

五女 ミュルミュール

九男ロンウェー   母はラウム妹のロネウェ


が存在する。弱小レイウを再興する九男五女の悪魔兄妹なり。



――――「貴様がモラクスか、王は首になったがどうする?

天公将軍、奇跡を起こしてみせるのだろう?」


ガミジン達兄妹が王の首をモラクスに投げつける。


「王よ…おいたわしいお姿で。

…そなたはレイウ王家の者、ガミジン皇帝じゃな。

ウェンカムを落として何がしたい、ザドウとオウギを敵に回すようなもんじゃぞ。


儂の妻はオウギの貴族、ザドウには妻の妹がおる。」


「それがどうした。 王は始祖レイウ王家のみだ。

逆らうならば全ての部族を服従させるだけだ。」


モラクスはガミジンの言葉に笑いを隠せなかった。


「ヒヒヒヒヒッ…!!!

弱小レイウと呼ばれた王家が大層な口を聞く!

ウェンカムも弱いが他三つの部族はどこも武力に長けておるぞ!


我は魔神モラクスである、この者らに死を賜り給え…」


モラクスの強力な幻術が彼を襲う。

牛の悪魔、馬の悪魔、数多の死骸が動き出しガミジンを襲った。


「…私はレイウ王家の青き獅子、その程度見飽きたわ!」


互いに禍々しい悪魔術と瘴気がぶつかり合う。

しかしモラクスの強大な霊気をガミジンが抑えた…いや、ロンウェーとストラスの支援術だ。


「…こんな、こんな終わり方は嫌じゃ!

儂は栄華を誇った王都カナンの天公将軍!

儂の天下はこれから始まるのだ…貴様さえ、侵攻してこなければ…」


ガミジンがモラクスを槍で貫く。


「…貴様これぐらいで死なんだろう、勝利の証、見せしめとして王城で処刑してやろう。」


――――モラクスを処刑しようとした時だった、老いた大巫女がガミジンを呼び止めたのだ。


「お待ちください、レイウの偉大なる王よ…

今しがた、改めてウェンカムにあるというコルウゥ様の厄を見てきました。


予言をお伝えします…


モラクスの子が、貴方のご子息に災いをもたらす。

モラクスの子が貴方の子を必ず殺すでしょう。

偉大なるレイウ王よ、モラクスの子孫は根絶やすべきです。」



モラクスは目を見開いた…


「嘘じゃ、そんな予言があってたまるか、儂に貸せ。

儂が見てやる…ぐっ…」


兵士に棒で叩かれ苦しむモラクス。


「…モラクスに子孫は何人いる?」


武器を構えたアグアレスがモラクス付きの女官達に問う。


「三男六女のお子がおります…長女イナリ様のみ身重の身です。」


「儂の子は長男を除いて皆若い、それも女子ばかりじゃ!

みな病弱で短命の呪いを受けている、貴様の子に害を与える前にみな死ぬ!


やめろガミジン王…そんな事をしては余計に厄を招くぞ!」


「…殺さずとも、幽閉すればよろしいのでは?

ウーヤー皇子にも同じ予言が出ました、モラクスの子も幼いなら暫く様子を見られては。」


オティウスとストラスが王に提案する。


「お待ちください、モラクスの子は長男と次女を火炙りに、三女と四女は聖女として拷問を受けさせる。

長女は腹を突き刺し処刑。

未来が見えました、従うべきです。

これもレイウに必要な事なのです…」


葬祭のオティウスが進言するなら正しいのだろう。

王は道を踏み外した。


「モラクスの子を全員探し出せ!!!

抵抗するようなら殺して構わん!」


「はっ!!!我等の偉大なるレイウ王よ


アグアレスら兄妹がガミジンに平伏す。


…これは悪夢、ウェンカムの悪夢

後に災厄を招いた、互いの子息の運命を決定付けた愚かしい決断。

彼の息子は這い上がって必ず魂を奪いに来るであろう。



【あとがき】

これもずっと決まってた話なのですがガミジン王の兄妹をロンウェーしか決めてなかったので今決めました。

大体兄妹の最後も決めていますがキャラデザは決めてません。

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