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眠れ我らの偉大なる、親愛なる烏王様 

  • 執筆者の写真: 鴉月語り部
    鴉月語り部
  • 2023年11月21日
  • 読了時間: 10分

更新日:3月8日




執筆日2023月11月21日

眠れ親愛なる烏王

コルウス、ウーヴェ、ミトラ回

コルウス暗殺、途中に残虐描写あり。


 医師であるウーヴェは同胞の治癒に辺り、休憩に入る時だった。


コルウスが一人になりたいといいヨルゼを下がらせ白雪姫の塔に籠った。


…今しかない

ヨルゼが外れた

ザンノックスは動けない


今奴は王妃の部屋に独り


八百年で初めての事だった

この機会を逃すわけには行かない


「…待っていてください最期の仕事ができたのです


行ってきます

おやすみマイレディー」


妻の亡骸にキスをし

わたくしは着替えた


――――「可哀想な赤頭巾さん

さあ、君の夢を叶えに行こう

君がすべき事はたった一つでいいんだよ


お父さんにね、これをプレゼントするんだ

可愛いイタズラ

後ろから静かに近づいて思いきり腰を刺してご覧


そしたら隠れんぼするんだよ」


「私の王子さま…

お父様はワタシが嫌いだっていうの…」


「このカツラを被ってご覧

お母様そっくりになる

きっとお父様は一番喜んでくれるよ」


どうでもいいから

早く、早くしろこの愚図

時間が無いんだ

彼を抱きかかえ廊下で待機する


なんて待ち遠しい…

賭けに失敗したらわたくしはどうしようか?

わたくしが刺し違えるべきか?


暫くするとうめき声が聞こえた











やった











成功した


こんな、簡単に?







――――這いつくばる彼を見て笑みが止まらない。

ドアに鍵をかける


「アハハハ!

お帰り僕らの親愛なる烏王様…

ああ僕等はこの時をどれだけ永く待っただろう…」


「…お前か、今お前に構ってる暇は無い事ぐらいわかるな?


ハァハァ…ザンかノックス、ヨルゼを呼んでくれ

ウーヴェ、どうした…急げ!


私の命令だぞ…」


「…嫌です


だって貴方はここで死ぬんですから見ていたい」


「…お前まで、このタイミングで裏切るのか


もう疲れた…

どうせ私は助からん


話がしたい、そのままいてくれ

…理由はわかる

ユイムの件だろう」


チッチッチ


「ノンノン、妻の件ではありません

まあそれもありますけどね…


わたくしはずっと貴方を殺すつもりで天上に志願しました

つまり最初から忠誠なんて微塵もありませんでしたよ!」


「…部族統一の事か?

怨みを買い過ぎてわからんまどろっこしいから理由を話せ」


「…モラクスの悲劇を覚えていますか?」


「知らん

父がやった事だろう

それと私何が関係してるんだ」


「でしょうね…貴方はまだ15だった


モラクスには三男六女の子がおりました

フォライーウヴァルフォルファクス


彼はご存知かな」


「知らん

ウェンカムは滅びた死の都だ


「フォライーウヴァルフォルファクス、それがわたくしの真名です

彼の父はかの暗愚ガミジン王の拷問を受け引きずり回された


妊娠中の長女イナリは夫と共に殺された

三女エウフェミアと四女ロザリアは拷問を、五女アイノは突き落とされ頭を打ち死亡

抵抗したラビツは腹に散弾を受け死亡

アーヴェは絞殺


隠れていたカスピエルはモラクスとオイリの前で斬り殺された…


フォライーは民衆に紛れてただ見つめることしかできなかった



残っている長男フォライーと次女オフェリアの存在を吐かせる為にです


邸に火が回り

パニックを起こしたオフェリアは火傷を負いながらもオウギまで逃げ延びた


長男フォライーは火中でピアノを弾いてみせた

王家の旋律で彼しかありえない



「ズルいですよ…お父様

わたくしだけ残すなんて

一番呪いを受けたわたくしを残すなんて」



オフェリアはオイリによく似た娘だった

彼女は恋もしたオウギを出ようとして捕まりガミジンに火炙りにされたのです…

これは貴方も知っていたでしょう?

貴方は気になって様子を見に来て、おぞましい光景を見ていたではありませんか…


わたくしはあの時火炙りにされた彼女を見ていたのです…

見届けるしかできなかった。

わたくしにはレイウ王家に復讐する使命があったから。


何故こうなったか?

老女が予言しモラクスの子がガミジン王の息子を殺すと出たからだ。

それだけの理由で?

ならウヤだって簡単に殺せたでしょう!


姉妹らは20年も生きていない!

幼子まで無惨に殺したんだぞ…


予言が怖いなら隔離でもすれば良かったのに。


死ぬはずだった長男はのうのうと生き延びてしまった。

あの日の悪夢は彼を今も苦しめた。


…あの日の惨劇が消える事は無いんですよ。

八百年経ってなおわたくしを苦しめて消えない。

ガミジンの宝である貴方を殺さないと、わたくしの傷は癒えないのです…!!!


ね、烏王様

わたくしの為に地獄に堕ちてくれませんか…

君の魂を頂戴?


一緒に父親のところへ逝こう!

僕が会わせてあげるよ…」


――――父がそこまでしてたとは思わなかった…

私の為ならなんだってするとは母から聞いていたがそこまで無惨な…


父上、そんな事しなくても私は強かったのに

私はそんな事望まない子だったから、貴方は伏せたのですね…


お前はその甘さに足元を掬われる


「…ウーヴェ、それがお前の答えなんだな

正直逆怨み半端ないが、お前をそれだけ苦しめたのならこの痛みと同じだろう


父親がすまな」


「ああ、謝らないでくださいね

わたくしが一方的に悪いみたいで不愉快です」


べリトの歌声が聞こえる…

ベルジェによく似たあの子

私の醜い部分を受け継いだ容姿が好きじゃなかった


「…私はどれぐらいで死ぬ?」


「…貴方ならあと30分は苦しめるんじゃないですか?

見回り外したの残念でしたね


来たところで貴方の声を借りて追い返すだけですが…」


「…べリトを責めないでくれと伝えてくれないか


「嫌です

あの子には全ての罪を被って貰わないと…

わたくしにも子がいる

あの子達の為にわたくしはあくまで第一発見者でいなければいけない…


ガミジンがしたんですからわたくしにだって権利はあるでしょう?


「…お前、性格ひん曲がってるな


――――終わりましたよお父様…


お母様、イナリ、オフェリア、エウフェミア、ロザリア、アイノ、ラビツ、アーヴェ、カスピエル


貴方達の無念をようやく晴らせました…

奴が奪ったようにわたくしも奴の宝物を奪いました

仮面はもうお終い、もう要らない


…妻に逢いたい

いま会えば貴女はきっとわたくしの罪に気付いてしまうから、逢えなくて良かったのでしょう


人を呼ぼうと廊下に出てみれば王女が立っていた


…今一番見たくない顔ですね

気分が台無しだ


「あの、ウーヴェ…お父様は?」


「…非常に申し上げにくいのですが恐らく死んでいます」


――――あの、小娘

やはりわたくしに気付いてるのだろうか…どうせウヤの子だ

錯乱状態の小娘の言うことなんか信じないだろう


烏王の葬儀後、小娘に呼び出されたから出向いてやる


「…なんでしょうか王女様」


「ウーヴェ、あのね…

今すぐでなくて良いの


いつか、わらわの夫になって欲しいの…」


(ユイムから聞いてたけど貴方がここまでハンサムだとは思わなかった

イメージにぴったりの素顔だわ!)


…はあ?

なんだこの小娘…

妻の葬儀すらしてないんだぞ

  

「…どういう事で?」


「わらわが貴方を好きなのは知っているでしょう?

本気なの…

貴方がユイムを深く愛しているのはわかるから、貴方の傷が癒えてからでいいの…」


小娘が愛を語るなんて愚かしい…


「…父親が死んだそばからすぐ発情して、まるで娼婦ですね

反吐が出る」


「ウーヴェ?ごめんなさい…そうよね、はしたない事を言いましたね…

それはまた何かのキャラですか?」


「…貴女、わたくしに気付いてるんでしょう?

だから庇ったんでしょう?


婿にする男が烏王殺しなんてとんだお笑い種ですもんね」


「何を言っているのウーヴェ…あれはべリトで、貴方はべリトを庇おうとしたのですよね?」


なんだこの小娘、気付いてなかったか

しくじった



 【ミトラ王女】


「べリトの罪を被るならわらわも一緒に被るわ…

ね、ウーヴェ…わらわは貴方が好きなの


貴方の妻になって貴方に抱かれたい

ダメね、これでははしたない女ね


彼の手を握りいつもみたいに抱きつくと引き離された


「触れるな穢らわしい…

汚き血を引く愚かな小娘よ


わたくしも告白しますね


…昔から貴女が大嫌いでした

貴女のその顔を見る度に吐き気がしていた」


嘘…嘘よ

あの優しかったウーヴェが?

わらわの事を好きだって

妻がいなければ求婚してたって


「烏王殺しはわたくしが主犯です

べリトは手駒として利用されたに過ぎない…

貴女に近づいたのは失敗でしたね

彼みたいにチャンスを与えてくれるどころか、今みたいにわたくしの足を引っ張るだけだったんですから…」


「…貴方が、お父様を殺したの?

何故…」


「理由なんてどうでもいいでしょう

流石ウヤの子、ビッチで乗り換えが早い

…言っときますけど王妃様は好きでしたよ

あの方は馬鹿な男に振り回されただけ」


泣き崩れるわらわを見つめる彼のオッドアイが怖い…

あの目付きと、あの蔑む顔が焼ついた


「ああ元王女様、貴女は優しいからわたくしの罪を言いふらしたりしませんよね?

…ムラサキちゃん、星くんを悲しませたくないでしょう?

エタンセル家だって迷惑がかかる


…わたくしのこの罪、墓場まで持っていくつもりだ

告げ口できるものならやってみせろ小娘が


さようなら。

これに懲りたら男なんて信用するもんじゃないですよ…

男は狼で汚物、みんな嘘つき。」


わらわは一生忘れないでしょう…貴方のその醜い本性も、

貴方のその素顔も








【あとがき】


ずっと書きたかった、2012年以前最初から決まっていたラストです。

まだマヒナ三姉妹がいなかったのでウーヴェは独身設定でしたが既婚でもまあ問題無し。

ウーヴェはその為に作ったキャラで決まっていました。


ウーヴェの功績えぐいねん…普段はゴーストライターで無能扱いされてて地味だけど

・相討ち心中し冥界にユイムを連れて行ったゲオルグを阻止し、寿命を無くしてまでユイム蘇生

・手を汚さずコルウスを暗殺、「旧時代の貴方はもう不要でしょう?ずっところしたくて暗躍してました

我らの偉大なる烏王様…どうか、わたくしの狂った復讐劇の為に眠っていただけないでしょうか?」

歴史的に名が残ってコルウス、ある意味満足 戦争の責任の取り方として満足

・不死の秘薬を完成させ、親友を鳳凰に進化させ烏族の安寧と地上の浄化を託す…

・独占欲と執着を抑えて身を引き、ザンに最愛の妻を託す

・ユイムの傷の為に眼帯をプレゼント、彼女が目立たないように自分も全て捨てる


だが歴史上ではウーヴェは無能扱いのまま、烏族からは暗殺疑惑で歴史から抹消、親友だけが月の国でウーヴェを英雄として語り継いだ…


800年一人で狂気と復讐心抱えて、コルウスに隙が全く無かったんよ。

天地戦争でゲオルグのせいで自分の寿命無くなって、ザン・ノックス・ヨルゼら親衛隊が療養中

コルウスも「疲れた、一人にしてくれ…」って故人・王妃ベルジェリカの部屋に籠ってたんよね

皮肉にもウーヴェも防げなかった天地戦争のお陰で隙ができた

ユイム死亡した状態で、ウーヴェはずっとユイムの遺体を抱えて荒れた地上眺めてた。 

ウーヴェ「今しかない…魔が差したんです。王の務めを優先したとはいえ、ゲオルグに止めを刺しきれなかった王が憎い。 貴方が甘くなければ妻を失わずに済んだ」

烏王ころしやって吹っ切れたウーヴェがどうしても妻に逢いたくて、ゲオルグに奪われるのは癪だから冥界を渡って妻を蘇生した。 エウリュディケやイザナミのエピソードでこんなのあったよね。


ウーヴェの凄いところは最後まで同胞や妻を欺いて良い旦那で終わらせたところかな。

誰もウーヴェの暗殺計画を知らない、子供たちだけが察したけど…


ありがとう!!! ウーヴェのキャラめっっちゃよくない? 

これ相互に表上だけパクられた時はめっちゃむかついたわwww 

このキャラは私にしか書けないと思ってるから、いいけどな!!! 

こんだけ壮大な群像劇書いてからパクって欲しい(支離滅裂)  

ゲオルグ・ウヤが黒幕と見せかけて真の黒幕で国を救ったのはウーヴェっていう…これがやりたかった。 気づくのは読破した読者だけでいい…みたいな!

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