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銀の女王セレーネ、白銀の結婚式

  • 執筆者の写真: 鴉月語り部
    鴉月語り部
  • 2020年9月9日
  • 読了時間: 6分



執筆日 2020年

ウヤ反乱、ユイムの死と蘇生、永遠の愛と別れ 悲恋

ユイムの死とウーヴェの献身的な愛、白銀の結婚式と永遠の愛を誓う魂の恋人たち…



【ゲオルグvsユイム相討ちシーン】

ウヤ反乱時



昔から気に食わなかった

あの女の冷たい目が


だから、抉ってやった

綺麗な瑠璃の眼…

思わず食っちまった


「ユイムぅ…お前はいつも俺の邪魔をする


お前を一番に襲って妻にする」


「リノンは連れて行かせない…私の可愛くて大事な妹をお前になんかやらない


貴方と心中するなら代わりに私で十分お釣りが来るでしょう?」


「嗚呼ユイム、お前は本当に憎くて愛おしいな

その澄まし顔を、めちゃくちゃにやりたかったよ」


「兄さん…私、もう目が見えないの」


ユイムを抱き締め頭を撫でた


「兄さん、私、兄として愛していたのよ…

ごめんなさい…私が、もっと…素直に…

兄さんの、孤独を…理解して」


ユイム、死んじまったのか

お前を道連れにするのも悪くねぇ

マノリタ、愛していた

お前の娘達も全て




【ウーヴェ視点】



「…汚らしい、我妻に触れるな下衆が」

杖でゲオルグの死体を退かし、妻を抱き締めた


「…回復術を掛けなさい」

「でも、父様…」


「いいから、掛けなさい!!若紫、星!!」


掛けても掛けても治らない


「…父様、もう息をしていません…心臓が、動いてません」


「…」


妻を抱き締めるとまだ少しだけ温かい

死に顔すら美しい、わたくしの愛しき妻よ


「…ユイムさん、起きなさいな

子ども達をどうするのです

帰る場所が、貴女にはあるのです」


口付けると冷たい唇に舌を這わせた

もう動かない貴女の唇も


「…ユイムさん」


妹君を子らに回復させ

「いったぁ…あたし、死んだかと思った


姉ちゃんは?

死んでないよね…ずっとあたしを庇って」


「…姉ちゃん、寝てるの?」

「…死んでいます」


「嘘だよね、嘘でしょ…だって姉ちゃんは腹黒であたしなんか庇うはず」


「…死ぬ直前まで、貴女を回復していたから助かったのです」



わたくしは妻の亡骸を抱えて暫く歩いた


「ユイム…見なさいな、地上があんなにも暗黒に包まれている…わたくしはやるべきことがあるので、もう少し待っていてくださいね…」



ユイムの唇に何度も何度も愛おしく口づけた

なぞると冷たい死の味


「…ユイム、愛しています

貴女が憎い…空虚だったわたくしをこんなにも夢中にさせた貴女が」


―今日もユイムの亡骸をめかし込む

「嗚呼ユイム、美しいですよ

死化粧も映える美しさ」



_冥界へと下りて妻を蘇生するウーヴェ


「…魔界の扉、まだ閉めないでくださいね

ちょっと妻を迎えに逝ってきますので」


カツカツと降りていく

…なんて瘴気だ悪魔と契約したわたくしでも厳しい



「こんばんは、悪魔さん

妻を取り戻しに来ましたお話しませんか」


「…珍しい来客だ、代償は」


「…わたくしの寿命と父の骨董品を

どうせガラクタです」


「…お前は、寿命が短い

良いのか?後六年で死ぬぞ」

「…構いません

愛する妻に会えるなら喜んで差し出そう」


「…あい分かった、月の髪を持つ烏か

この薬を飲ませろ、副作用はあるが蘇生できる」


「ありがとうございます、悪魔の王よ」


_ウーヴェは妻に薬を口移しで飲ませる


「…ユイム」

「…あなた?」


「母様!!」


若紫と星が目を開けた母に抱き着く


「まあ、夢ですの?わたくし死にましたのよ」


「夢じゃないです!」

「あなたが、迎えに来てくれたような気がするの」


「…魔界まで、ちょっとね」

「髪…真っ白になってしまいましたね

あなたが好きと言ってくれた黒髪でしたのに

目も、無くなって不格好ですのよ」



「貴女は、どんな姿でも美しく輝いてますよ

わたくしの美しい墓場鳥ナイチンゲール」


ウーヴェは愛する妻を姫抱きし、唇を重ねた

誰よりも欲しかった言葉、妻を慰める最上級の言葉


「あなた、愛していますわ…」

「…わたくしも、最愛の妻よ」


「ところでユイムさん、貴女は制止を無視して命を粗末にしましたね」


唇をなぞり


「悪い子です、帰ったらお仕置きですね」

「まあ、あなたったら…」


「何故、そんなことをしたの!!貴方から寿命を奪ってまで生きたくないわ!!」


「…それ程までに、貴女を愛しているから」

「嫌…嫌よ…後六年なんてあっという間に過ぎる

わたくしも殉死します」


「…それは許しません

貴女は子らを守ってください

…あの子達は頼りがない」


「嫌よ…嫌…あなたを失って生きていける強さなんて無いの」

泣き喚くユイムの涙を舐め取り唇をうばう


「んん…嫌っ」


「…ユイムさん

どうか理解して欲しい

大丈夫です、わたくし達はきっと

また巡り会える

またどうしようもなく惹かれ合う運命なのですから…」


何度も何度もキスをした抱き合った


「…あなた、約束よ

必ずまた愛し合うの」

「ええ…」


何度も何度も交わった


「ハアハア…子が欲しい、あなたの子が沢山」

「…できなくなってしまって、申し訳ありません

沢山子ども、欲しかったですね…」


「私が産まなかったのが悪いの

嗚呼ウーヴェ様…どうか私を壊れる程愛して…あなたを私に、刻みつけて」


「ユイムさん…」


燃え上がる夜はずっと続いた



【白銀の結婚式と永遠の愛】



――――三度目の夫婦式、祝宴の中で夫の寿命を知っていたユイムだけは悲しい表情でめかし込んでいた。

失った烏族の誇りであった黒髪と片目を失った自分の醜い顔、ゲオルグの傷跡…


人前に出るのが怖い、憂鬱だわ…


鏡を見てため息を付いていたら真っ白なタキシードに白髪の夫が私を迎えに来た


「あなた、どうしましたのその白髪」


「貴女が目立たないように…わたくしはあなたの夫ですから」


「まあ…」


なんて律儀な人なの、私の為にそこまで…

どうして貴方はそうも献身的な愛を捧げれるの?


「明日は挙式ですよこちらの方が雰囲気出るでしょう」


二人のダンスは満月が美しい夜に星空の元で


跪き手に口付け


「どうか微笑んでください、わたくしの女王セレーネ

貴女は銀の馬車に乗る華やかな月の女王

星の女王

全能の…絶世の美女」


なんて美しい求婚の言葉…

私には勿体ない、釣り合わない


「セレーネ…じゃあ貴方は?」

「わたくしはエンディミオン、不死となって夜空に眠るセレーネの永遠の恋人…」


遂にユイムは大泣きしてしまった


「よしよしよしよし…ユイムさん泣かない泣かない」


「素敵なプロポーズ…私は幸せ物だわ


そんなことを言わないで…私、貴方を思って毎日泣くわ

セレーネはエンディミオンを思って泣くの…永遠の恋人」


「セレーネ、」


涙を舐め取る


「貴女を抱きたい

セレーネは50の娘を生むのです」

「ナルキッソスは、星かしら」


「ええ…貴女はやはり笑顔が美しいです


深く深く堕ちていく

口付けは甘く深い


「初夜のように、交わりましょう」


「ええ…ウーヴェ様、」


「今でも昨日のように思っていますよ…貴女と初めて結ばれた運命の日を

貴女は、怖がって泣いてしまいましたね…」


「私も…

貴方は優しく私を抱きましたわ

熱くて蕩けるキスに酔いましたのよ」


「命尽きる日まで、何度でもしましょうな…わたくしの美しい女王様」





【あとがき】

悲恋の白銀の結婚式が書きたくって入れた公式エピソードです。

ウーヴェ×ユイムは永遠の恋人、護る愛がテーマでウーヴェはゲオルグから彼女を護る為に何度も転生して巡り合いました。

悪魔が銀の女王をロマンチックに奪い去るイメージの転生を何度か繰り返しています。

神話時代の月の女神は長寿で複数の夫がいたりするので、その名残でユイムは複数のカップリングが存在します。

ウーヴェ×ユイム、ザン×ユイム、ゲオルグ×ユイムで分かれそう。

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